ハッカー
「ゴミデータを分析したところで、
ろくな結果は出やしないぞ?」
天才的なハッキングの腕で望むものは何でも手に入れることができていた彼は、常日頃、自らの実力を世に知らしめたいと願っていた。完璧に整えられた記事に誤記を混ぜ込んでおいたり、患者名簿の年齢をいじるなどのイタズラじみたことで始まった彼のハッキング行為は、やがて都市の公式発表文を丸ごとすり替えたり、個人情報を抜き取るなど、日ごとに大胆さを増していった。ついには銀行のネットワークにまで手を出すようになったが、当局の執拗な追跡により、いよいよ尻尾を捕まえられることとなった。社会秩序を乱した報いとして余生は牢屋暮らしになると思われたが、彼の腕前に目をつけていた権力関係者により、禁固刑を免れることを条件に市民社会に貢献するプロジェクトに強制参加させられた。\n自らの能力で他人を助けられることを知って以来、人に迷惑をかけてばかりだった過去を悔やみ、ハッカーとして社会に貢献することを心に決めた。ハッキングした場所にトレードマークである子犬のキャラクターを置いておくことで知られ、今やそのマークは悪意あるイタズラを示すものではなく、市民社会に貢献せんとする善意のシンボルとなっている。やや傲慢で横柄な態度から周りの者を怒らせがちだが、その胸の奥には理想社会の実現という夢を秘めている。今や彼は裏の世界でホワイトハッカーとして市民のために活躍しており、現在は非倫理的な実験を行っている疑いがある巨大企業のネットワークに潜り込むためのプロジェクトを秘密裏に進めている。